さいこうの夜 もふもふえん篇 Aルート
「会いに行く……か。それいいじゃん!」
途端に、志狼が目を光らせた。
直央とかのんは、例のメモがよほど怖かったのか、どこか不安げな表情だったが、やがて志狼の提案に同意した。
正直なところ、子どもたちには危険な目に遭わないよう、特別なことはして欲しくない。
だが、せっかく3人が賢君のために動こうとしているのに、それを引き止めるのははばかられる……。
そう思っていると、志狼が元気よく拳を掲げた。
「それじゃあ名探偵もふもふえん、聞き込み開始!」
「あっ、待ってしろうくん! かのんもがんばる!」
志狼が駆け出し、意を決したようにかのんがそれに続く。
「えと、あの……どうしましょう、プロデューサーさん」
とりあえず、一緒にいれば問題ないだろう。
ぼくは直央を連れて、2人の後を追いかけた。
カエルの着ぐるみを着た人物は、談話室のソファにじっと座って、テレビを眺めていた。
と言っても、目がどこにあるのかいまいちわからないため、見ているように思えただけなのだか。
「あっ、いたいた! おーい、カエルー!」
「ダ、ダメだよ、しろうくん。カエルさんって呼ばないと」
「そうだよ、しろうくん!失礼な言い方は、メッ!」
ぼくが注意する前に、すかさず直央とかのんが指摘を入れる。
小さくてもアイドル。礼儀はしっかりしているのだ。
「ごめんな?」
志狼もすぐにハッとして、頭を下げた。
「あのさ、カエルさん。オレたち、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
志狼がそう言うと、カエルさんは何も言わず、ぼくたちの方を向いた。
その姿に少し不気味さを覚え、子どもたちを自分の方へ引き寄せる。
「あのね、けんくんって、お兄さん知らない? かのんたちの大切な仲間なんだけど、いなくなっちゃったの」
かのんが尋ねると、カエルさんはなんの言葉も発さず、ただ左右にゆっくりと首を振った。
どうやら、賢君のことは知らないらしい。
「あ、あの、カエルさんはどうしてこのペンションに来たんですか?」
今度は、ぼくの陰に隠れていた直央が、おずおずと口を開いた。しかし、その質問にも、カエルさんはゆらゆらと左右に首を振るだけだ。
これは「言えない」と言うことだろうか。
すると、ムッとした様子の志狼が、僕たち3人の手を引っ張って部屋の隅へと引っ張って行った。
「やっぱアイツ怪しいよ! なんにも言わないじゃん」
「かのんもそう思う……。なんだか怖くなってきちゃったかも」
「うん……。ここに来てから、一言も喋っていないよね」
子どもたちがコソコソと相談していると、背後で、カシャン、と何かが倒れる音がした。
見ると、テーブルに置いてあったお茶がひっくり返っている。どうやら子どもたちの質問から逃げようとしたカエルさんが、立ち上がった拍子にぶつかってしまったようだ。
「あー! カエルさん、そんなとこにいるとぬれちまうぞ!?」
「かのん、うさぎさんのハンカチあるよ!」
「そういえば向こうにもぞうきんが……ボク取ってくる!」
「これでよし……っと」
綺麗になったテーブルを見て、直央がホッと胸を撫で下ろす。
結局、全員でお茶を拭いている時でさえ、カエルさんは何も喋らなかった。ただ、何も感じていないわけではないようだ。その証拠に、カエルのイラストが入った飴玉を4つぼくに手渡し、部屋へと戻っていった。
「あのさぁ、プロデューサー」
飴玉を口に放り込みながら、志狼が言った。
「あの<カエルの中>、けんなんじゃないの?」
「えっ!? けんくんがカエルさんになってるってこと!?」
「な、なんでそう思うの? しろうくん」
ぼくは、かのんと直央と一緒に目を丸くした。
あのカエルの中が賢君?
そんなまさか。
「だってさー、けんって結構お茶こぼしてないか? オレ、事務所で3回くらい見たことあるもん」
「た、確かにそうかも。ボクも見たことある……」
「かのんも! でも、なんでけんくん、カエルさんなんか着てるの?」
「そんなの知るかよ。 アイツに聞けよな」
そう言って、志狼は大きなあくびをした。
もうそろそろ、もふもふえんは眠った方がいい時間だろう。
ぼくがベッドに入るか、と提案すると、3人は素直に自室に戻り、歯を磨きだした。やはり、みんな眠いのを我慢していたようだ。
「ふぁ……プロデューサーさん、おやすみなさーい♪」
「おやすみなさい、プロデューサーさん」
「むにゃ……おやすみ~」
3人が仲よくベッドに入ったことを確認し、ぼくは部屋の明かりを消した。
これからまた、賢君を探さないといけないが……
志狼が言っていたこと、社長に相談してもいいかもしれない。
ぼくはそう思って、一旦談話室に戻ることにした。
社長は落ち着きのない様子でソファに腰掛けていた。
ぼくに気づくと
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途端に、志狼が目を光らせた。
直央とかのんは、例のメモがよほど怖かったのか、どこか不安げな表情だったが、やがて志狼の提案に同意した。
正直なところ、子どもたちには危険な目に遭わないよう、特別なことはして欲しくない。
だが、せっかく3人が賢君のために動こうとしているのに、それを引き止めるのははばかられる……。
そう思っていると、志狼が元気よく拳を掲げた。
「それじゃあ名探偵もふもふえん、聞き込み開始!」
「あっ、待ってしろうくん! かのんもがんばる!」
志狼が駆け出し、意を決したようにかのんがそれに続く。
「えと、あの……どうしましょう、プロデューサーさん」
とりあえず、一緒にいれば問題ないだろう。
ぼくは直央を連れて、2人の後を追いかけた。
カエルの着ぐるみを着た人物は、談話室のソファにじっと座って、テレビを眺めていた。
と言っても、目がどこにあるのかいまいちわからないため、見ているように思えただけなのだか。
「あっ、いたいた! おーい、カエルー!」
「ダ、ダメだよ、しろうくん。カエルさんって呼ばないと」
「そうだよ、しろうくん!失礼な言い方は、メッ!」
ぼくが注意する前に、すかさず直央とかのんが指摘を入れる。
小さくてもアイドル。礼儀はしっかりしているのだ。
「ごめんな?」
志狼もすぐにハッとして、頭を下げた。
「あのさ、カエルさん。オレたち、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
志狼がそう言うと、カエルさんは何も言わず、ぼくたちの方を向いた。
その姿に少し不気味さを覚え、子どもたちを自分の方へ引き寄せる。
「あのね、けんくんって、お兄さん知らない? かのんたちの大切な仲間なんだけど、いなくなっちゃったの」
かのんが尋ねると、カエルさんはなんの言葉も発さず、ただ左右にゆっくりと首を振った。
どうやら、賢君のことは知らないらしい。
「あ、あの、カエルさんはどうしてこのペンションに来たんですか?」
今度は、ぼくの陰に隠れていた直央が、おずおずと口を開いた。しかし、その質問にも、カエルさんはゆらゆらと左右に首を振るだけだ。
これは「言えない」と言うことだろうか。
すると、ムッとした様子の志狼が、僕たち3人の手を引っ張って部屋の隅へと引っ張って行った。
「やっぱアイツ怪しいよ! なんにも言わないじゃん」
「かのんもそう思う……。なんだか怖くなってきちゃったかも」
「うん……。ここに来てから、一言も喋っていないよね」
子どもたちがコソコソと相談していると、背後で、カシャン、と何かが倒れる音がした。
見ると、テーブルに置いてあったお茶がひっくり返っている。どうやら子どもたちの質問から逃げようとしたカエルさんが、立ち上がった拍子にぶつかってしまったようだ。
「あー! カエルさん、そんなとこにいるとぬれちまうぞ!?」
「かのん、うさぎさんのハンカチあるよ!」
「そういえば向こうにもぞうきんが……ボク取ってくる!」
「これでよし……っと」
綺麗になったテーブルを見て、直央がホッと胸を撫で下ろす。
結局、全員でお茶を拭いている時でさえ、カエルさんは何も喋らなかった。ただ、何も感じていないわけではないようだ。その証拠に、カエルのイラストが入った飴玉を4つぼくに手渡し、部屋へと戻っていった。
「あのさぁ、プロデューサー」
飴玉を口に放り込みながら、志狼が言った。
「あの<カエルの中>、けんなんじゃないの?」
「えっ!? けんくんがカエルさんになってるってこと!?」
「な、なんでそう思うの? しろうくん」
ぼくは、かのんと直央と一緒に目を丸くした。
あのカエルの中が賢君?
そんなまさか。
「だってさー、けんって結構お茶こぼしてないか? オレ、事務所で3回くらい見たことあるもん」
「た、確かにそうかも。ボクも見たことある……」
「かのんも! でも、なんでけんくん、カエルさんなんか着てるの?」
「そんなの知るかよ。 アイツに聞けよな」
そう言って、志狼は大きなあくびをした。
もうそろそろ、もふもふえんは眠った方がいい時間だろう。
ぼくがベッドに入るか、と提案すると、3人は素直に自室に戻り、歯を磨きだした。やはり、みんな眠いのを我慢していたようだ。
「ふぁ……プロデューサーさん、おやすみなさーい♪」
「おやすみなさい、プロデューサーさん」
「むにゃ……おやすみ~」
3人が仲よくベッドに入ったことを確認し、ぼくは部屋の明かりを消した。
これからまた、賢君を探さないといけないが……
志狼が言っていたこと、社長に相談してもいいかもしれない。
ぼくはそう思って、一旦談話室に戻ることにした。
社長は落ち着きのない様子でソファに腰掛けていた。
ぼくに気づくと
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