さいこうの夜 もふもふえん篇 Bルート
子どもたちの賢君を助けたい、と言う気持ちはよくわかるが、正直なところ、危険なことはして欲しくない。
ぼくは厳しめに、何もしないで、と3人に告げた。
しかし、
「はあ!? なんでだよ、プロデューサーのいじわる!けんのこと、心配してるだけなのに!」
志狼はヘソを曲げてしまったらしく、二階へと駆け上がって行ってしまった。
追いかけようと、手すりに手を掛けた時だった。
「おわっ!? なんでこんなとこに!?」
二階から志狼の声が聞こえ、直央とかのんが目を丸くする。
「ど、どうしたんだろう? しろうくん、何かあったのかな?」
「かのんたちも行かなきゃ! プロデューサーさん、早く早くー!」
かのんに手を引かれ、ぼくは二階へと駆け上がった。
階段の上、志狼が見ていたものは……生きたカエルだった。一般的によく見るアマガエルとは異なり、体が黄色かった。小さくて可愛らしいが、ぬらぬらと光るその皮膚は、なんだか毒々しく見えた。
「ほわぁ、カエルさんだー!!」
「かわいいね。 なんて種類だろう?」
子どもたちが目をキラキラさせていると、不意にカエルが、ピョコピョコと移動を始めた。
「あっ、行っちゃうよ! かのん、カエルさんのこともっと見たいのに~!」
「ヘヘッ! 追いかけようぜ!」
まずい。
こんな雪山に野生のカエルがいる訳がないので、恐らく誰かのペットだとは思うが、毒がない種類だとは言い切れない。触ってしまうと危険だ。
ぼくは慌てて、カエルと、それを追うもふもふえんの後を追った。
「あれ? なんだ、ここ?」
「わわわっ! カエルさんがいっぱいだねー!」
「わぁ……! 本当だ、すごいね」
カエルを追いかけた先でぼくたちが見たものは、部屋の所々に置かれた、可愛らしいカエルグッズの数々だった。
どうやら気づかない内に、誰かの客室に迷い込んでしまったらしい。
「あっ! あそこに小さい水槽がある! 中に、このカエルさんとおんなじカエルさんがいるよ! ここから逃げてきちゃったんだね」
そう言って、かのんが水槽へ駆け寄っていく。
「ここのお客さん、カエルが大好きなのかな? ほら、カバンの中にもグッズが……」
直央が指差した方を見ると、大きなボストンバッグから、カエルのグッズが顔を覗かせていた。
志狼がバッグに近づき、持ち手の部分についていたネームタグを読み上げる。
「タナカエル……田中、エル? 誰だ?」
「なんだかカエルさんみたいで、かわいい名前!」
「そうだね。でも、カエルさんかぁ。それって、もしかして……」
直央がそう言いかけた時、背後で、ギシッと木の床を踏む音がした。
それと同時に、まるで熊のような形の大きな影が僕らにかかる。
誰かが、後ろに、立っている……?
ぼくは生唾を飲み込み、恐る恐る振り返った。
そこに立っていたのは……
「田中さん! この飴、食べてもいいか!?」
「あっ、かのんも食べたーい! いい? 田中さん!」
「2人とも、あんまり勝手なことしちゃダメだよ……!」
今、もふもふえんの3人は、カエルの着ぐるみ……もとい、田中エル氏の部屋で遊んでいる。
先ほど、ぼくらが振り向いた場所に立っていたのは、当然のごとく、この部屋を借りている田中エル氏だ。
ペンションにやってきた時と変わらず、氏は一言も言葉を発しない。だが、どうやら田中さんは、カエルの研究をしているカエル大好き人間であるらしい。
ここには、冬眠中の野生のカエルを探しに来たようだった。
変わった部分はあるものの心優しい田中さんをもふもふえんはすっかり気に入ったようだった。
このまま、田中さんにもふもふえんを預けて、賢君を探しに戻ろうか?
ぼくがそう考えた時、「賢が見つかったぞ!」と、1階から、斎藤社長の大きな声が響いた。
それを聞いた子どもたちは、わぁ!と嬉しそうに顔をほころばせる。
「よかった!けんくん、無事だったんだ!」
「いったいどこにいたんだ? プロデューサー、早く顔見に行こうぜ!」
「田中さんも一緒に行こー? かのんがみんなに紹介してあげる!」
ぼくと田中氏は、もふもふえんに手を引かれ、賢君と社長の元へ戻っていった。しかし、賢君が一体どこで何をしていたのか、それは結局、謎に包まれたままだ。
終
ぼくは厳しめに、何もしないで、と3人に告げた。
しかし、
「はあ!? なんでだよ、プロデューサーのいじわる!けんのこと、心配してるだけなのに!」
志狼はヘソを曲げてしまったらしく、二階へと駆け上がって行ってしまった。
追いかけようと、手すりに手を掛けた時だった。
「おわっ!? なんでこんなとこに!?」
二階から志狼の声が聞こえ、直央とかのんが目を丸くする。
「ど、どうしたんだろう? しろうくん、何かあったのかな?」
「かのんたちも行かなきゃ! プロデューサーさん、早く早くー!」
かのんに手を引かれ、ぼくは二階へと駆け上がった。
階段の上、志狼が見ていたものは……生きたカエルだった。一般的によく見るアマガエルとは異なり、体が黄色かった。小さくて可愛らしいが、ぬらぬらと光るその皮膚は、なんだか毒々しく見えた。
「ほわぁ、カエルさんだー!!」
「かわいいね。 なんて種類だろう?」
子どもたちが目をキラキラさせていると、不意にカエルが、ピョコピョコと移動を始めた。
「あっ、行っちゃうよ! かのん、カエルさんのこともっと見たいのに~!」
「ヘヘッ! 追いかけようぜ!」
まずい。
こんな雪山に野生のカエルがいる訳がないので、恐らく誰かのペットだとは思うが、毒がない種類だとは言い切れない。触ってしまうと危険だ。
ぼくは慌てて、カエルと、それを追うもふもふえんの後を追った。
「あれ? なんだ、ここ?」
「わわわっ! カエルさんがいっぱいだねー!」
「わぁ……! 本当だ、すごいね」
カエルを追いかけた先でぼくたちが見たものは、部屋の所々に置かれた、可愛らしいカエルグッズの数々だった。
どうやら気づかない内に、誰かの客室に迷い込んでしまったらしい。
「あっ! あそこに小さい水槽がある! 中に、このカエルさんとおんなじカエルさんがいるよ! ここから逃げてきちゃったんだね」
そう言って、かのんが水槽へ駆け寄っていく。
「ここのお客さん、カエルが大好きなのかな? ほら、カバンの中にもグッズが……」
直央が指差した方を見ると、大きなボストンバッグから、カエルのグッズが顔を覗かせていた。
志狼がバッグに近づき、持ち手の部分についていたネームタグを読み上げる。
「タナカエル……田中、エル? 誰だ?」
「なんだかカエルさんみたいで、かわいい名前!」
「そうだね。でも、カエルさんかぁ。それって、もしかして……」
直央がそう言いかけた時、背後で、ギシッと木の床を踏む音がした。
それと同時に、まるで熊のような形の大きな影が僕らにかかる。
誰かが、後ろに、立っている……?
ぼくは生唾を飲み込み、恐る恐る振り返った。
そこに立っていたのは……
「田中さん! この飴、食べてもいいか!?」
「あっ、かのんも食べたーい! いい? 田中さん!」
「2人とも、あんまり勝手なことしちゃダメだよ……!」
今、もふもふえんの3人は、カエルの着ぐるみ……もとい、田中エル氏の部屋で遊んでいる。
先ほど、ぼくらが振り向いた場所に立っていたのは、当然のごとく、この部屋を借りている田中エル氏だ。
ペンションにやってきた時と変わらず、氏は一言も言葉を発しない。だが、どうやら田中さんは、カエルの研究をしているカエル大好き人間であるらしい。
ここには、冬眠中の野生のカエルを探しに来たようだった。
変わった部分はあるものの心優しい田中さんをもふもふえんはすっかり気に入ったようだった。
このまま、田中さんにもふもふえんを預けて、賢君を探しに戻ろうか?
ぼくがそう考えた時、「賢が見つかったぞ!」と、1階から、斎藤社長の大きな声が響いた。
それを聞いた子どもたちは、わぁ!と嬉しそうに顔をほころばせる。
「よかった!けんくん、無事だったんだ!」
「いったいどこにいたんだ? プロデューサー、早く顔見に行こうぜ!」
「田中さんも一緒に行こー? かのんがみんなに紹介してあげる!」
ぼくと田中氏は、もふもふえんに手を引かれ、賢君と社長の元へ戻っていった。しかし、賢君が一体どこで何をしていたのか、それは結局、謎に包まれたままだ。
終