さいこうの夜 Altessimo篇 Aルート
2人に、まずはペンションの中を見て回ろう、と提案した。
都築さんの言う「音」は気になるが、この吹雪の中、 賢君が外へ出たということは考えにくい。
それに、プロデューサーとして、アイドルを危険な場所に連れて行くのはなるべく避けたかった。
「貴殿の意見に、わたしも賛成だ。いいですよね、都築さん」
「うん、わかった。それじゃあどこから探そうか。プロデューサーさん」
そうだな……。
ぼくはこのペンションの見取り図を頭の中で思い浮かべた。
探す、と言っても、小林夫妻が留守である今、いろいろな場所を覗くのは非常識だ。
「こんなにも大人数で遊びにきたぼくたちを快く歓迎し いてくれたご夫妻に、迷惑は極力かけたくない。
そう思ったぼくは、まずは普通に、客室を見て回ろうと2人に提案した。
「変わったところは……なさそうだな」
Altessimoが泊まっている部屋の扉を閉めながら、麗が呟いた。
他のアイドルたちにも許可を取って、2階にあるほぼすべての客室を覗いたが、結局異常はないようだった。
あと客室で見ていない場所と言えば、カエルの着ぐるみを着た人物の部屋のみだが……。
「あの人の部屋は、見ないのかい?」
都築さんの言葉に、ぼくと麗は顔を見合わせた。
確かに、あの人物は怪しい。
だが、他にも探す場所はたくさんあるのだ。
そういう場所を調べる前から、他のお客さんを疑うような真似はしたくない。
「もう少し……他も見て回りませんか?わたしたちの問題に巻き込むのは、申し訳ないですし」
きっと、ぼくと同じ考えだったのだろう。
麗の提案に、ぼくもうなずいてみせた。
「そう? じゃあ、別の場所へ……おや?」
その時、都築さんの動きが止まった。
「どうかしたんですか、都築さん?」
キョロキョロと辺りを見回す都築さんに麗が声をかける。
「うん……」
都築さんは目を閉じて、少しだけ耳を澄ませた後、廊下の突き当たりを指差して、こう言った。
「今、この中で、物音がしなかった?」
「えっ?」
それは、廊下の突き当たりにある扉だった。
確かこの扉は、掃除用具を置いている物置だと、ペンションに来た際小林夫妻に案内された場所だ。
まさか、賢君はここにいるのだろうか……?
ぼくは率先して、扉のノブに手を伸ばした。
その瞬間、どんと音がしたかと思うと、ドアが勢いよ く開いて黒い影が飛び出してきた!
「わっ! 驚いた……猫か」
「本当だ、かわいいね」
中から出てきたのは、ペンションで飼っている猫のジェニーだった。話には聞いていたが、こんなところにいたのか。
ジェニーの愛らしい姿に癒されていると、都築さんが呟くように言った。
「でも……ここに居ないとなると、けんさんはどこへ行ったんだろう。気になる音も聞こえないし」
「もしかして、音が聞こえにくい場所があるのかもしれませんね」
「音が聞こえにくい場所……土の中、とかかい?」
土の中というのは極端だが、確かに地面の中なら音が聞こえにくいかもしれない。
そう思ったぼくは、2人を連れて1階へと降りることにした。
「わぁ、広い地下室だね」
「こんな場所があったなんて……」
1階で、地下室へ続く階段を見つけたぼくたちは、石畳の階段を降りて驚きの声をあげた。
どうやらここには、たくさんの【倉庫】があるらしい。
その1つを開けようとした時、1階から社長の声が聞こえた。
一度戻って話をした方がいいようだ。
ぼくはAltessimoの2人に、少し休憩するように言い、1人社長の元へと向かった。
社長は落ち着きのない様子でソファに腰掛けていた。
ぼくに気づくと
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都築さんの言う「音」は気になるが、この吹雪の中、 賢君が外へ出たということは考えにくい。
それに、プロデューサーとして、アイドルを危険な場所に連れて行くのはなるべく避けたかった。
「貴殿の意見に、わたしも賛成だ。いいですよね、都築さん」
「うん、わかった。それじゃあどこから探そうか。プロデューサーさん」
そうだな……。
ぼくはこのペンションの見取り図を頭の中で思い浮かべた。
探す、と言っても、小林夫妻が留守である今、いろいろな場所を覗くのは非常識だ。
「こんなにも大人数で遊びにきたぼくたちを快く歓迎し いてくれたご夫妻に、迷惑は極力かけたくない。
そう思ったぼくは、まずは普通に、客室を見て回ろうと2人に提案した。
「変わったところは……なさそうだな」
Altessimoが泊まっている部屋の扉を閉めながら、麗が呟いた。
他のアイドルたちにも許可を取って、2階にあるほぼすべての客室を覗いたが、結局異常はないようだった。
あと客室で見ていない場所と言えば、カエルの着ぐるみを着た人物の部屋のみだが……。
「あの人の部屋は、見ないのかい?」
都築さんの言葉に、ぼくと麗は顔を見合わせた。
確かに、あの人物は怪しい。
だが、他にも探す場所はたくさんあるのだ。
そういう場所を調べる前から、他のお客さんを疑うような真似はしたくない。
「もう少し……他も見て回りませんか?わたしたちの問題に巻き込むのは、申し訳ないですし」
きっと、ぼくと同じ考えだったのだろう。
麗の提案に、ぼくもうなずいてみせた。
「そう? じゃあ、別の場所へ……おや?」
その時、都築さんの動きが止まった。
「どうかしたんですか、都築さん?」
キョロキョロと辺りを見回す都築さんに麗が声をかける。
「うん……」
都築さんは目を閉じて、少しだけ耳を澄ませた後、廊下の突き当たりを指差して、こう言った。
「今、この中で、物音がしなかった?」
「えっ?」
それは、廊下の突き当たりにある扉だった。
確かこの扉は、掃除用具を置いている物置だと、ペンションに来た際小林夫妻に案内された場所だ。
まさか、賢君はここにいるのだろうか……?
ぼくは率先して、扉のノブに手を伸ばした。
その瞬間、どんと音がしたかと思うと、ドアが勢いよ く開いて黒い影が飛び出してきた!
「わっ! 驚いた……猫か」
「本当だ、かわいいね」
中から出てきたのは、ペンションで飼っている猫のジェニーだった。話には聞いていたが、こんなところにいたのか。
ジェニーの愛らしい姿に癒されていると、都築さんが呟くように言った。
「でも……ここに居ないとなると、けんさんはどこへ行ったんだろう。気になる音も聞こえないし」
「もしかして、音が聞こえにくい場所があるのかもしれませんね」
「音が聞こえにくい場所……土の中、とかかい?」
土の中というのは極端だが、確かに地面の中なら音が聞こえにくいかもしれない。
そう思ったぼくは、2人を連れて1階へと降りることにした。
「わぁ、広い地下室だね」
「こんな場所があったなんて……」
1階で、地下室へ続く階段を見つけたぼくたちは、石畳の階段を降りて驚きの声をあげた。
どうやらここには、たくさんの【倉庫】があるらしい。
その1つを開けようとした時、1階から社長の声が聞こえた。
一度戻って話をした方がいいようだ。
ぼくはAltessimoの2人に、少し休憩するように言い、1人社長の元へと向かった。
社長は落ち着きのない様子でソファに腰掛けていた。
ぼくに気づくと
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