さいこうの夜 FRAME篇 Bルート
「体を温めるために、簡単なおじやでも作ろうか?」
信玄さんの提案に、龍は目を丸くして驚いた。
「えっ、誠司さんが作ったおじやを食べれるんですか!?」
「ああ。見たところ材料はあるようだし、簡単なのものでよければ……だが」
「体の中から温める作戦、ですね! やったー!」
信玄さんのおじやが食べられるとなって、龍は大喜びしている。
「よかったな、龍」
「英雄とプロデューサーさんの分も作るから、みんなで食べよう」
「おっ、本当か。ありがとう、信玄。素直に嬉しいぜ」
お礼を言うと、信玄さんは優しく微笑む。
すると、厨房の角から龍の声が聞こえてきた。
「あれ、こんなところにコック服がありますね」
龍が手にしているのは、真っ白なコック服だ。
だが、なにやら胸の部分に「まぼろしのこっくふく」と書いてある。
「まぼろしのこっくふく……なんで平仮名なんだ?」
「さ、さあ。あっ、ここにメモが貼ってあるみたいです」
龍がコック服にくっついていた付箋を見つけ、読み上げた。
「どなたでも使用可、って書いてあります」
これは……小林夫妻の文字だろうか。
「ちょうどエプロンが欲しいと思っていたんだ。コック服があるなら、ありがたく使わせていただこう」
信玄さんはそう言って、コック服を着用した。
すると、コック服を着るや否や、信玄さんから異様なオーラが放出された。
「今夜作る料理はコチラ!! 生姜をたっぷりを入れた信玄誠司オリジナルおじやだ! それでは、Let'sクッキン!!」
どこかにカメラでもあるのだろうか……
戸惑うぼくたちをよそに、信玄さんは魔法にかかった ように料理を進めていく。
「使うのは生姜と卵だ。まずは生姜を細かく切るぞ!……と思いきや、切った材料はすでにここにある!」
「あるのか!」
どこから取り出したのか、すでに細かく刻まれた生姜が並んでいる。
ツッコむ英雄さん、呆然としている龍やぼくに構わず、信玄さんは作業を進める。
「次は土鍋で米を炊くぞ! 米を土鍋に入れると見せかけて……」
イヤな予感がする。
信玄さんが土鍋をぱかっと開ける。
「むしろ料理はできている!!!」
「あるのかよ! さっきの生姜はなんだったんだ!」
ぼくたちは一体何を見せられているんだろう……
目の前で繰り広げられる料理番組のような光景に、ぼくたちはただただ呆然とするしかなかった。
「簡単だっただろ。さあ、できたぞ!! 召し上がれ!!!」
おじやがよそわれたお皿が並ぶと、信玄さんの身にまとっていたコック服がおもむろに脱げる。
「はっ……! 自分は一体何を……」
目撃したすべての出来事を話すと、信玄さんは驚いた様子だった。
どうやら記憶がないらしい。
「すまない、迷惑をかけたみたいだ……」
「大丈夫だ、信玄。ちょっと面白かったぞ」
「そうですよ! ほら、おじやだって完璧に作ってくれたし!」
龍の言う通り、美味しそうな生姜たっぷり信玄誠司オリジナルおじやが完成している。
結局、ぼくたちはおじやを美味しくいただくことができたが、厨房は信玄さんの勢いのある料理工程によって見るも無残な状態だった。
「まぼろしのこっくふく」とは一体なんだったのか。
そして、賢君の行方は結局……?
小林夫妻が帰ってくるまでに厨房を元通りに片付けるというミッションが課されたぼくたちには、賢君失踪の謎が残ったのであった。
終
信玄さんの提案に、龍は目を丸くして驚いた。
「えっ、誠司さんが作ったおじやを食べれるんですか!?」
「ああ。見たところ材料はあるようだし、簡単なのものでよければ……だが」
「体の中から温める作戦、ですね! やったー!」
信玄さんのおじやが食べられるとなって、龍は大喜びしている。
「よかったな、龍」
「英雄とプロデューサーさんの分も作るから、みんなで食べよう」
「おっ、本当か。ありがとう、信玄。素直に嬉しいぜ」
お礼を言うと、信玄さんは優しく微笑む。
すると、厨房の角から龍の声が聞こえてきた。
「あれ、こんなところにコック服がありますね」
龍が手にしているのは、真っ白なコック服だ。
だが、なにやら胸の部分に「まぼろしのこっくふく」と書いてある。
「まぼろしのこっくふく……なんで平仮名なんだ?」
「さ、さあ。あっ、ここにメモが貼ってあるみたいです」
龍がコック服にくっついていた付箋を見つけ、読み上げた。
「どなたでも使用可、って書いてあります」
これは……小林夫妻の文字だろうか。
「ちょうどエプロンが欲しいと思っていたんだ。コック服があるなら、ありがたく使わせていただこう」
信玄さんはそう言って、コック服を着用した。
すると、コック服を着るや否や、信玄さんから異様なオーラが放出された。
「今夜作る料理はコチラ!! 生姜をたっぷりを入れた信玄誠司オリジナルおじやだ! それでは、Let'sクッキン!!」
どこかにカメラでもあるのだろうか……
戸惑うぼくたちをよそに、信玄さんは魔法にかかった ように料理を進めていく。
「使うのは生姜と卵だ。まずは生姜を細かく切るぞ!……と思いきや、切った材料はすでにここにある!」
「あるのか!」
どこから取り出したのか、すでに細かく刻まれた生姜が並んでいる。
ツッコむ英雄さん、呆然としている龍やぼくに構わず、信玄さんは作業を進める。
「次は土鍋で米を炊くぞ! 米を土鍋に入れると見せかけて……」
イヤな予感がする。
信玄さんが土鍋をぱかっと開ける。
「むしろ料理はできている!!!」
「あるのかよ! さっきの生姜はなんだったんだ!」
ぼくたちは一体何を見せられているんだろう……
目の前で繰り広げられる料理番組のような光景に、ぼくたちはただただ呆然とするしかなかった。
「簡単だっただろ。さあ、できたぞ!! 召し上がれ!!!」
おじやがよそわれたお皿が並ぶと、信玄さんの身にまとっていたコック服がおもむろに脱げる。
「はっ……! 自分は一体何を……」
目撃したすべての出来事を話すと、信玄さんは驚いた様子だった。
どうやら記憶がないらしい。
「すまない、迷惑をかけたみたいだ……」
「大丈夫だ、信玄。ちょっと面白かったぞ」
「そうですよ! ほら、おじやだって完璧に作ってくれたし!」
龍の言う通り、美味しそうな生姜たっぷり信玄誠司オリジナルおじやが完成している。
結局、ぼくたちはおじやを美味しくいただくことができたが、厨房は信玄さんの勢いのある料理工程によって見るも無残な状態だった。
「まぼろしのこっくふく」とは一体なんだったのか。
そして、賢君の行方は結局……?
小林夫妻が帰ってくるまでに厨房を元通りに片付けるというミッションが課されたぼくたちには、賢君失踪の謎が残ったのであった。
終