さいこうの夜 Jupiter篇 Bルート
ゲホゲホゲホ……!
辺り一面、霞がかかったように見えなくなってしまった。
どうやら、謎の調味料が床に落ちた途端、フタが開いて中身が飛び散ったようだ。
3人は無事だろうか。必死に声をかける。
「ゴホゴホ……ええ、大丈夫ですよ」
「わあっ、何も見えないよー!」
「一体なんなんだよ、あのスパイス!」
返事が聞こえて、ぼくホッと胸を撫で下ろす。
しかし、この状況で迂闊に動くのも危険だ。
危ないから、そこで待っていてほしいと彼らに伝えた。
「悪いな、プロデューサー。頼んだぜ」
その言葉に勇気が湧いてくる。
何とかドアを探し出して、3人を厨房から連れ出し、談話室へ避難した。
それにしても……。
あの謎の調味料は、なんだったのだろうか?
ぼくは、厨房の捜索は一旦保留にして、他のところを探してみようと提案した。
「そうだよ! あふれるパッションで、早く賢君を探し出そう!!」
突然、誰かに力強く肩を叩かれた。
驚きつつ振り返ると、そこには形容しがたい光景が広がっていた。
そこには、眩いほどのパッションオーラを身にまとった翔太がいた。
いつもの国民的弟アイドルの面影はほとんどなく、むしろ頼り甲斐のあるガキ大将といった風情だ。
一体、何が起きているんだろう……!?
そのまぶしすぎる輝きに目を細めながら、どうしたのかと問いかけた。
「なんか知らないけど、どんどんやる気が湧いてくるんだよ!!!」
翔太は、こっちが吹き飛ぶほどの大声を出した。
「今なら、賢君だってなんだって見つけられる気がする!! 早速、探しに行ってくるよーー!!!」
すごい勢いで走り出すと、談話室を出て行った。
……あんなふうに、熱血な翔太もいいもんだな。
呆然と見送っていると、冬馬と北斗の姿が見えないことに気づいた。
慌てて談話室を見回すと、ソファの背もたれから、茶色の髪がのぞいていた。
「うーん……腹減ったし、もう動きたくねー。このまま昼寝しよーぜー」
それは、冬馬だった。
いつの間にかパジャマに着替えていて、ムニャムニャと寝言を言っている。クッションを抱きしめてゴロゴロする姿は、正直可愛らしくもある。
冬馬にまで、何かが起きてしまった……。
こんなにやる気のない彼は、未だかつて見たことがない。混乱でぼくは頭を抱える。
……とにかく、打開策を見つけなければ。
どうか、どうか彼だけは無事であってくれ……!!
藁にもすがる思いで、北斗を探す。
すると、カーテンの一角が不自然に盛り上がっていることに気づき、ぼくはそっとめくってみた。
「チャオ☆ ふふっ、見つかっちゃいましたね。次は俺が鬼ですよ!」
ちょこんと体育座りをして、無垢な笑顔を浮かべている。
それは、間違いなく北斗だった。どうやら本人は、かくれんぼをしているつもりらしい。思わず一緒に遊びたくなってしまったが我慢した。
スヤスヤと気持ちよさそうに寝ている、冬馬。
やけにパッションに溢れている、翔太。
無邪気にかくれんぼをする、北斗。
嘘だ。
あれがJupiterのはすがない。
何か、悪い夢を見ているんだ……。
原因として思い当たるのは、やはりあの謎の調味料しかない。あれをぶちまけてから、3人はまるで正反対の人物のように変わってしまった。
どうすれば、元に戻るんだろう。
もしかすると、先ほどの厨房に、彼らを元に戻す調味料があるかもしれない……。
ぼくは、急いで厨房へと戻った。
しかし、次第に鼻がムズムズしてくる。ついでに、急激にやる気も減退していった。
このままではいけない。
そう思うほどに、何かが奪われていく……。
その何かとは、おそらく。
パ…………。
パ、パ………………。
ハックション!!!!!!!!!
盛大なくしゃみと共に、ぼくは意識を手放した。
気づくと、談話室で毛布に包まっていた。どうやら眠っていたようだ。
「プロデューサー、ようやく起きたのか」
顔を上げると、Jupiterの3人がいた。冬馬は私服に着替えていて、北斗はいつものように笑顔を湛えている。
そして、翔太はというと……。なんと、パッションパワーで賢君を見つけてくれていた。
なんて頼れるユニットなんだろう!
そういえば、あの調味料の正体は?
そして結局賢君はどこにいたのだろう?
疑問は残ったままのはずだ……。
考えを巡らせていて、ぼくはふと思い出した。
掃除をしていないから、厨房が調味料まみれのままだ。小林夫妻が帰ってくる前に片付けなければ!
ぼくたちは、急いで厨房へ向かったのだった……。
終
辺り一面、霞がかかったように見えなくなってしまった。
どうやら、謎の調味料が床に落ちた途端、フタが開いて中身が飛び散ったようだ。
3人は無事だろうか。必死に声をかける。
「ゴホゴホ……ええ、大丈夫ですよ」
「わあっ、何も見えないよー!」
「一体なんなんだよ、あのスパイス!」
返事が聞こえて、ぼくホッと胸を撫で下ろす。
しかし、この状況で迂闊に動くのも危険だ。
危ないから、そこで待っていてほしいと彼らに伝えた。
「悪いな、プロデューサー。頼んだぜ」
その言葉に勇気が湧いてくる。
何とかドアを探し出して、3人を厨房から連れ出し、談話室へ避難した。
それにしても……。
あの謎の調味料は、なんだったのだろうか?
ぼくは、厨房の捜索は一旦保留にして、他のところを探してみようと提案した。
「そうだよ! あふれるパッションで、早く賢君を探し出そう!!」
突然、誰かに力強く肩を叩かれた。
驚きつつ振り返ると、そこには形容しがたい光景が広がっていた。
そこには、眩いほどのパッションオーラを身にまとった翔太がいた。
いつもの国民的弟アイドルの面影はほとんどなく、むしろ頼り甲斐のあるガキ大将といった風情だ。
一体、何が起きているんだろう……!?
そのまぶしすぎる輝きに目を細めながら、どうしたのかと問いかけた。
「なんか知らないけど、どんどんやる気が湧いてくるんだよ!!!」
翔太は、こっちが吹き飛ぶほどの大声を出した。
「今なら、賢君だってなんだって見つけられる気がする!! 早速、探しに行ってくるよーー!!!」
すごい勢いで走り出すと、談話室を出て行った。
……あんなふうに、熱血な翔太もいいもんだな。
呆然と見送っていると、冬馬と北斗の姿が見えないことに気づいた。
慌てて談話室を見回すと、ソファの背もたれから、茶色の髪がのぞいていた。
「うーん……腹減ったし、もう動きたくねー。このまま昼寝しよーぜー」
それは、冬馬だった。
いつの間にかパジャマに着替えていて、ムニャムニャと寝言を言っている。クッションを抱きしめてゴロゴロする姿は、正直可愛らしくもある。
冬馬にまで、何かが起きてしまった……。
こんなにやる気のない彼は、未だかつて見たことがない。混乱でぼくは頭を抱える。
……とにかく、打開策を見つけなければ。
どうか、どうか彼だけは無事であってくれ……!!
藁にもすがる思いで、北斗を探す。
すると、カーテンの一角が不自然に盛り上がっていることに気づき、ぼくはそっとめくってみた。
「チャオ☆ ふふっ、見つかっちゃいましたね。次は俺が鬼ですよ!」
ちょこんと体育座りをして、無垢な笑顔を浮かべている。
それは、間違いなく北斗だった。どうやら本人は、かくれんぼをしているつもりらしい。思わず一緒に遊びたくなってしまったが我慢した。
スヤスヤと気持ちよさそうに寝ている、冬馬。
やけにパッションに溢れている、翔太。
無邪気にかくれんぼをする、北斗。
嘘だ。
あれがJupiterのはすがない。
何か、悪い夢を見ているんだ……。
原因として思い当たるのは、やはりあの謎の調味料しかない。あれをぶちまけてから、3人はまるで正反対の人物のように変わってしまった。
どうすれば、元に戻るんだろう。
もしかすると、先ほどの厨房に、彼らを元に戻す調味料があるかもしれない……。
ぼくは、急いで厨房へと戻った。
しかし、次第に鼻がムズムズしてくる。ついでに、急激にやる気も減退していった。
このままではいけない。
そう思うほどに、何かが奪われていく……。
その何かとは、おそらく。
パ…………。
パ、パ………………。
ハックション!!!!!!!!!
盛大なくしゃみと共に、ぼくは意識を手放した。
気づくと、談話室で毛布に包まっていた。どうやら眠っていたようだ。
「プロデューサー、ようやく起きたのか」
顔を上げると、Jupiterの3人がいた。冬馬は私服に着替えていて、北斗はいつものように笑顔を湛えている。
そして、翔太はというと……。なんと、パッションパワーで賢君を見つけてくれていた。
なんて頼れるユニットなんだろう!
そういえば、あの調味料の正体は?
そして結局賢君はどこにいたのだろう?
疑問は残ったままのはずだ……。
考えを巡らせていて、ぼくはふと思い出した。
掃除をしていないから、厨房が調味料まみれのままだ。小林夫妻が帰ってくる前に片付けなければ!
ぼくたちは、急いで厨房へ向かったのだった……。
終