さいこうの夜 Legenders篇 Aルート
エーゲ海の塩が入った袋を手に取り……倒れている田中さんに向かって、その塩を手掴みで投げた!!
「……あれで、いいのかなー?」
そんな想楽くんの声が聞こえた気がしたが、今はそれどころではない。
二度、三度。ぼくは夢中で塩を投げ続ける。
すると、急に田中さんが立ち上がる。
そしてゆっくりとこちらに近づいてきた。
ぼくを呼ぶLegenders3人の声がするが、田中さんの謎の威圧感に圧倒されたぼくは、その場から動けず目を瞑ってしまう。
「……素晴らしい!」
え?
予想外の言葉に、ぼくは思わず目を開けた。
「素晴らしい! これは……エーゲ海の塩ではないですか!」
田中さんは興奮した様子で、自身に振りかかった塩を眺めていた。
「この塩がお分かりになるとは……もしや、あなたは!」
その言葉にハッとして、声の主……古論さんに目を向けると、彼は何やら小刻みに震えているようだった。
「海を愛する同志なのですね!!!!!」
古論さんの声が響き渡る。
田中さんは一瞬驚いた様子を見せたが、無言でうなずくと急にぽつぽつと語り始めた。
今の自分は、正確に言うと『田中さん』ではない。自分は霊だから、田中さんの体を借りて今、こうして話をしている。
自分は大の海好きだったが、死んだ後、気づけば霊として雪山にいた……。
そして、極度の方向音痴のため雪山から抜け出すことができず、彷徨っていたらしい。
「なるほどな。だが、お前さん……悪さはしていないんだろう?」
「はい。私はただ、海に行きたくて……誰かにお尋ねしたかったんです。それができないのであれば、せめて海が好きな人と語り合いたくて……」 「はは、どうりで不穏な気配を感じないワケだ」
「でも、ここ雪山だもんねー。海に詳しい人とはあまり巡り会えないんじゃない?」
田中さんの風貌で、まともに会話ができるからだろう。
葛之葉さんも想楽くんも、霊に驚いている様子は何もなかった。
そして、古論さんに至っては……
「それなら、私にお任せください!」
生き生きとした古論さんの声が、田中さん……ではなく、海好きの霊の元へ向けられる。
「……そうだな。ここは古論に任せるとするか」
「うん。なんか長くなりそうだし……2人とも、せっかくの機会なら楽しんでおいでー」
葛之葉さんと想楽くんの言葉に、古論さんと田中さんの体を借りた霊はうなずいた。
……それから少しばかりの時間が過ぎた。
「古論さん、本当にありがとうございました。ここまで海に詳しい方と話せたのは、いつぶりのことか……」
「私の方こそ! 紅海の塩分濃度のように濃度の濃い話ができたのは、久しぶりでした!」
海好きの霊も古論さんも、満足した様子だ。
話によると、どうやら古論さんは海のある方角も教えてあげたらしい。
「では、私はそろそろ海へ向かおうと思います。大切な仲間を探しているところをこれ以上足止めするわけにはいかないので……お時間をいただいてしまい、申し訳ありませんでした」
「大丈夫だよー。僕たちも、もう1周ペンションを見て回れたしねー」
想楽くんの言葉通り、霊が古論さんと話している間は、ぼくと葛之葉さんと想楽くんは賢君探しをしていた。
「まあ、手掛かりは掴めていないままだがな」
「あ、そのことなんですが……」
苦笑する葛之葉さんに、霊が何かを思い出した素振りをする。
「あなたたちが探している方は……もしかすると、【倉庫】にいるかもしれません」
……倉庫?
詳しいことを聞こうとすると、田中さんの体が再び倒れる音がする。
ふと気配を感じて天井の方を見ると、青白い光が宙に漂っていた。
「ではみなさん、お元気で! 古論さん、いつか……いつかまた、お会いしましょう……!」
そう言うと、青白い光は消えてしまった。
「……消えちゃったねー。倉庫なんて、このペンションにあったっけー?」
「さァな。だが……とりあえず霊は消えたようだ。これも、古論のおかげだな」
「雨彦……。ふふ、お役に立ててよかったです。あの方が、海へたどり着けることを祈ります」
「きっと大丈夫なんじゃないかなー? まあ、無事でよかったよー」
そんな会話をしながら、ぼくたちは一旦、田中さんを談話室へ運ぶことにした。
ぼくは談話室を訪れ、社長に事の顛末を話した。
みんなが無事だとわかった途端、社長は安心したようだ。
しかし、まだ事件は解決したわけではない……。
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「……あれで、いいのかなー?」
そんな想楽くんの声が聞こえた気がしたが、今はそれどころではない。
二度、三度。ぼくは夢中で塩を投げ続ける。
すると、急に田中さんが立ち上がる。
そしてゆっくりとこちらに近づいてきた。
ぼくを呼ぶLegenders3人の声がするが、田中さんの謎の威圧感に圧倒されたぼくは、その場から動けず目を瞑ってしまう。
「……素晴らしい!」
え?
予想外の言葉に、ぼくは思わず目を開けた。
「素晴らしい! これは……エーゲ海の塩ではないですか!」
田中さんは興奮した様子で、自身に振りかかった塩を眺めていた。
「この塩がお分かりになるとは……もしや、あなたは!」
その言葉にハッとして、声の主……古論さんに目を向けると、彼は何やら小刻みに震えているようだった。
「海を愛する同志なのですね!!!!!」
古論さんの声が響き渡る。
田中さんは一瞬驚いた様子を見せたが、無言でうなずくと急にぽつぽつと語り始めた。
今の自分は、正確に言うと『田中さん』ではない。自分は霊だから、田中さんの体を借りて今、こうして話をしている。
自分は大の海好きだったが、死んだ後、気づけば霊として雪山にいた……。
そして、極度の方向音痴のため雪山から抜け出すことができず、彷徨っていたらしい。
「なるほどな。だが、お前さん……悪さはしていないんだろう?」
「はい。私はただ、海に行きたくて……誰かにお尋ねしたかったんです。それができないのであれば、せめて海が好きな人と語り合いたくて……」 「はは、どうりで不穏な気配を感じないワケだ」
「でも、ここ雪山だもんねー。海に詳しい人とはあまり巡り会えないんじゃない?」
田中さんの風貌で、まともに会話ができるからだろう。
葛之葉さんも想楽くんも、霊に驚いている様子は何もなかった。
そして、古論さんに至っては……
「それなら、私にお任せください!」
生き生きとした古論さんの声が、田中さん……ではなく、海好きの霊の元へ向けられる。
「……そうだな。ここは古論に任せるとするか」
「うん。なんか長くなりそうだし……2人とも、せっかくの機会なら楽しんでおいでー」
葛之葉さんと想楽くんの言葉に、古論さんと田中さんの体を借りた霊はうなずいた。
……それから少しばかりの時間が過ぎた。
「古論さん、本当にありがとうございました。ここまで海に詳しい方と話せたのは、いつぶりのことか……」
「私の方こそ! 紅海の塩分濃度のように濃度の濃い話ができたのは、久しぶりでした!」
海好きの霊も古論さんも、満足した様子だ。
話によると、どうやら古論さんは海のある方角も教えてあげたらしい。
「では、私はそろそろ海へ向かおうと思います。大切な仲間を探しているところをこれ以上足止めするわけにはいかないので……お時間をいただいてしまい、申し訳ありませんでした」
「大丈夫だよー。僕たちも、もう1周ペンションを見て回れたしねー」
想楽くんの言葉通り、霊が古論さんと話している間は、ぼくと葛之葉さんと想楽くんは賢君探しをしていた。
「まあ、手掛かりは掴めていないままだがな」
「あ、そのことなんですが……」
苦笑する葛之葉さんに、霊が何かを思い出した素振りをする。
「あなたたちが探している方は……もしかすると、【倉庫】にいるかもしれません」
……倉庫?
詳しいことを聞こうとすると、田中さんの体が再び倒れる音がする。
ふと気配を感じて天井の方を見ると、青白い光が宙に漂っていた。
「ではみなさん、お元気で! 古論さん、いつか……いつかまた、お会いしましょう……!」
そう言うと、青白い光は消えてしまった。
「……消えちゃったねー。倉庫なんて、このペンションにあったっけー?」
「さァな。だが……とりあえず霊は消えたようだ。これも、古論のおかげだな」
「雨彦……。ふふ、お役に立ててよかったです。あの方が、海へたどり着けることを祈ります」
「きっと大丈夫なんじゃないかなー? まあ、無事でよかったよー」
そんな会話をしながら、ぼくたちは一旦、田中さんを談話室へ運ぶことにした。
ぼくは談話室を訪れ、社長に事の顛末を話した。
みんなが無事だとわかった途端、社長は安心したようだ。
しかし、まだ事件は解決したわけではない……。
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