さいこうの夜 F-LAGS篇 Bルート
想楽くんが持っていた開運のお守りを借りることにした。
ぼくは勢いよく、倒れている田中さんに向かって、 そのお守りをかざした!
すると……。
「……ヲカ……テ!」
「……っ!」
辺り一帯が、突然青白い光に包まれる。
何を言っているかわからなかったが、田中さんの口調には明らかに怒りが滲み出ていた。
「……ウミヲ……カタラセテ!」
「え……? わっ!」
今のは田中さんと……想楽くんの声!?
想楽くんのことが気にかかったが、目の前が眩しくて何も見えない。
やがて、青白い光が収束していった。
「……プロデューサー。大丈夫か?」
気づくと、ぼくは床に座り込んでいた。
ぼくは大丈夫だけど……想楽くんは……?」
葛之葉さんの問いかけにうなずいた後、ぼくは想楽くんの方を見ると、同じく床に座り込んでいた想楽くんを起こす古論さんと目があった。
「プロデューサーさん、ご無事でよかったです……! 想楽、立てますか?」
「うん、大丈夫だヨー……ロイザメ」
……ん?
想楽くんの様子がおかしい。
今の想楽くんの言葉に、ぼくだけじゃなく、葛之葉さんや古論さんも、なんとも言えない表情をしていた。
「あれー? なんか、口が勝手ニ……シキベラ」
「想楽! いつの間に、そこまで海の魚に詳しくなったのですか!?」
古論さんは、すごい勢いで想楽くんの手を取った。
その一方、想楽くんは困った表情を浮かべている。
「『海を語らせて』か……なるほどな」
葛之葉さんは苦笑いしていた。
葛之葉さんの推測によると、先ほどの青白い光は田中さんが話していた霊によるものではないかという。
田中さんが倒れたのも同様で、「ウミヲカタラセテ」という言葉も、その霊が田中さんに取り憑いて言った言葉かもしれない。
そして今、想楽くんが喋る度に海の魚の名前を呟いてしまうのも……きっと霊の力によるものではないか、とのことだった。
「つまり……田中さんに取り憑いた霊は私と同じ、海を愛する同志ということですか!?」
「察しがいいな、古論。まあ、そういうことなんだろう。だが……噂に聞いていた『悪霊』ではなさそうだ。北村は若干、災難を被ったようだがな」
大の海好きの霊……もしかしたら、誰かと海について語りたかったのだろうか? そう考えると、確かに葛之葉さんが言う通り、『悪霊』ではなさそうだ。
「若干どころじゃないと思うんだけドー……チザメ」
「ドチザメ、ニシキベラ、ヨロイザメ……素晴らしい です、想楽! これらの魚は……」
想楽くんの言葉に反応を示した古論さんは、熱弁をふるい始めた。
「はは。まあ、古論が海について語っているのを聞いていれば、その謎の力からも解放されるんじゃないか?」
確かにそれは一理あるかもしれない。葛之葉さんの提案で、想楽くんには古論さんの海の話を聞いてもらい、ぼくと葛之葉さんは気を失っている田中さんは談話室へ運ぶことにした。(※「田中さんは」→「田中さんを」)
「もうー、勘弁してよネー……ズミゴチ」
呆れる想楽くんに、「やれやれ」と呟きつつも少し楽しそうな顔をしているように見える葛之葉さん。
「なるほど! 次は、ネズミゴチについてですね!」
古論さんは……言わずもがなだ。
ぼくは、田中さんに視線を移す。
すると、葛之葉さんが田中さんの元へと向かっていく姿が目に入った。
「田中サンは、俺が談話室まで運ぼう。プロデューサーは北村や古論のことを、念のため見ておいてくれるか」
葛之葉さんにそう言われ、ぼくは2人を見守ることにした。
「なに、田中サンを運んでちょいと野暮用を片付けたら、すぐ戻るさ」
野暮用?
そういえば、大切なことを忘れている気がする。
だが、今はこの状態をどうにかした方がいい。
ぼくは、田中さんを運ぶ葛之葉さんを見送った。
「困ったなー、一句読もうとしても、全部魚の名前になっちゃうなんテー……ングハギ」
「いいではないですか! 私も挑戦したいです!」
隣からは、想楽くんと古論さんのシュールな会話が聞こえてくる。
想楽くんが元通りになったのは、古論さんの熱弁が落ち着いた頃……そして、野暮用を済ませたらしい葛之葉さんが、ここに戻ってきた頃なのだった。
終
ぼくは勢いよく、倒れている田中さんに向かって、 そのお守りをかざした!
すると……。
「……ヲカ……テ!」
「……っ!」
辺り一帯が、突然青白い光に包まれる。
何を言っているかわからなかったが、田中さんの口調には明らかに怒りが滲み出ていた。
「……ウミヲ……カタラセテ!」
「え……? わっ!」
今のは田中さんと……想楽くんの声!?
想楽くんのことが気にかかったが、目の前が眩しくて何も見えない。
やがて、青白い光が収束していった。
「……プロデューサー。大丈夫か?」
気づくと、ぼくは床に座り込んでいた。
ぼくは大丈夫だけど……想楽くんは……?」
葛之葉さんの問いかけにうなずいた後、ぼくは想楽くんの方を見ると、同じく床に座り込んでいた想楽くんを起こす古論さんと目があった。
「プロデューサーさん、ご無事でよかったです……! 想楽、立てますか?」
「うん、大丈夫だヨー……ロイザメ」
……ん?
想楽くんの様子がおかしい。
今の想楽くんの言葉に、ぼくだけじゃなく、葛之葉さんや古論さんも、なんとも言えない表情をしていた。
「あれー? なんか、口が勝手ニ……シキベラ」
「想楽! いつの間に、そこまで海の魚に詳しくなったのですか!?」
古論さんは、すごい勢いで想楽くんの手を取った。
その一方、想楽くんは困った表情を浮かべている。
「『海を語らせて』か……なるほどな」
葛之葉さんは苦笑いしていた。
葛之葉さんの推測によると、先ほどの青白い光は田中さんが話していた霊によるものではないかという。
田中さんが倒れたのも同様で、「ウミヲカタラセテ」という言葉も、その霊が田中さんに取り憑いて言った言葉かもしれない。
そして今、想楽くんが喋る度に海の魚の名前を呟いてしまうのも……きっと霊の力によるものではないか、とのことだった。
「つまり……田中さんに取り憑いた霊は私と同じ、海を愛する同志ということですか!?」
「察しがいいな、古論。まあ、そういうことなんだろう。だが……噂に聞いていた『悪霊』ではなさそうだ。北村は若干、災難を被ったようだがな」
大の海好きの霊……もしかしたら、誰かと海について語りたかったのだろうか? そう考えると、確かに葛之葉さんが言う通り、『悪霊』ではなさそうだ。
「若干どころじゃないと思うんだけドー……チザメ」
「ドチザメ、ニシキベラ、ヨロイザメ……素晴らしい です、想楽! これらの魚は……」
想楽くんの言葉に反応を示した古論さんは、熱弁をふるい始めた。
「はは。まあ、古論が海について語っているのを聞いていれば、その謎の力からも解放されるんじゃないか?」
確かにそれは一理あるかもしれない。葛之葉さんの提案で、想楽くんには古論さんの海の話を聞いてもらい、ぼくと葛之葉さんは気を失っている田中さんは談話室へ運ぶことにした。(※「田中さんは」→「田中さんを」)
「もうー、勘弁してよネー……ズミゴチ」
呆れる想楽くんに、「やれやれ」と呟きつつも少し楽しそうな顔をしているように見える葛之葉さん。
「なるほど! 次は、ネズミゴチについてですね!」
古論さんは……言わずもがなだ。
ぼくは、田中さんに視線を移す。
すると、葛之葉さんが田中さんの元へと向かっていく姿が目に入った。
「田中サンは、俺が談話室まで運ぼう。プロデューサーは北村や古論のことを、念のため見ておいてくれるか」
葛之葉さんにそう言われ、ぼくは2人を見守ることにした。
「なに、田中サンを運んでちょいと野暮用を片付けたら、すぐ戻るさ」
野暮用?
そういえば、大切なことを忘れている気がする。
だが、今はこの状態をどうにかした方がいい。
ぼくは、田中さんを運ぶ葛之葉さんを見送った。
「困ったなー、一句読もうとしても、全部魚の名前になっちゃうなんテー……ングハギ」
「いいではないですか! 私も挑戦したいです!」
隣からは、想楽くんと古論さんのシュールな会話が聞こえてくる。
想楽くんが元通りになったのは、古論さんの熱弁が落ち着いた頃……そして、野暮用を済ませたらしい葛之葉さんが、ここに戻ってきた頃なのだった。
終