さいこうの夜 W篇 Bルート
ピピーッ!!
耳をつんざくような、ホイッスルの音が聞こえる。
気がつくと、ぼくはサッカースタジアムのピッチでどよめきと歓声に包まれていた。
遠くから聞き慣れた声が聞こえる。
「とーまクン、ドンマイ!」
「大丈夫大丈夫! 冷静に1本取りに行こっ!」
そこには、チームメイトを元気づける蒼井兄弟の姿があった。
「りょうくん! さっきのカバーすごいよかった! その調子で最後まで気合い入れていこう!」
引き続きチームメイトに声をかけながら蒼井兄弟がぼくのもとに駆け寄ってきた。
「監督!」
ぼくはハッとして周囲の状況を伺った。
試合も終盤。2-2の同点でアディショナルタイムは3分。イエローを取られたものの、チームは誰一人欠けていない……。
ここで追加点をとって、このまま優勝だ。全力で決めてこいと、2人を鼓舞するように、僕は最後の指示を出した。
「へへっ♪ 任せてよ、監督!」
「だって俺たち、チーム315プルタクションのWエース。『最強の双子』だからね♪」
そう言って2人はピッチに戻っていった。
ぼくができること、それはもうチームのみんなを信じて待つことだけだ……。
試合再開の笛が鳴る。
ベンチからでも、みんなの優勝への思いがひしひしと伝わってきた。
昨年、悠介の左足の怪我をきっかけにチームがバラバラになってしまった315プルタクションは、シーズン終盤で優勝を取り逃した。
昨年の失敗をバネに、仲間同士の絆を深め、コンディションを整え、今シーズンこそは優勝を逃さない!とチーム一丸となって頑張ってきた。
その時、涼の堅実なディフェンスにより敵チームの選手の足元が狂う。
すかさず享介がカットに入り、華麗にボールを奪うと蒼井兄弟がゴールめがけて走り出した。
2人をフォローするため、チームメイトたちも攻撃の陣形に移る。
インターセプトからのゴール!! 行ける……!
ぼくは、ふとある日の練習風景を思い出す……。
「去年はオレたち、最後の最後でバラバラになって、結局最後は惨敗だった。すごい、悔しかった……」
「優勝確実……なんて言われてたのに……。サポー ターの期待を裏切ったんだ……」
「だからさ、最後の最後でシュート決めるときは、俺たちの必殺技で決めたいんだ、監督」 「今年こそ、オレたち315プルタクションが『最強』のチームだってことを証明したい!」
ぼくは、あの時、チャンスがあるならいつでも行ってこいと、そう2人に告げた。
最強の技で優勝を決めろ!
ぼくは心の中で祈るように叫んだ。
「決めるよ、享介!」
「任せて、悠介!」
2人が敵チームのキーパーと対峙する。
悠介か、享介か。どちらがシュートを放つのか、キーパーは細心の注意を払いながら2人を観察していた。
その時、阿吽の呼吸とともに享介がふわりとボールを蹴り上げる。
「決めるぜ! Wシュート!!」
悠介の左足と享介の右足が同時に1つのボールを蹴り上げた。
2人にしかできない、巧みな技と絶妙なタイミングが織りなすシュートに、キーパーが驚きの表情をあらわにする。
勢いづいた球は鋭く回転しながら、空気を切り裂くようにゴールに吸い込まれていく。
そして、キーパーの左手を横切って、激しくゴールネットを揺らした。
ピィーーーーーーーーーーー
試合終了の笛とともに、歓声と拍手と声援が激しい雨のようにピッチに降り注ぐ。
「監督一!!」
蒼井兄弟を筆頭に、選手たちがぼくのいるベンチに向かって走ってくる。
みんな、満開の笑顔だった。
ベンチに座っていた控えの選手たちも、ピッチで戦っていた戦友たちを迎えに走っていく。
気がつくと、ぼくの目は涙で溢れていた。
終
耳をつんざくような、ホイッスルの音が聞こえる。
気がつくと、ぼくはサッカースタジアムのピッチでどよめきと歓声に包まれていた。
遠くから聞き慣れた声が聞こえる。
「とーまクン、ドンマイ!」
「大丈夫大丈夫! 冷静に1本取りに行こっ!」
そこには、チームメイトを元気づける蒼井兄弟の姿があった。
「りょうくん! さっきのカバーすごいよかった! その調子で最後まで気合い入れていこう!」
引き続きチームメイトに声をかけながら蒼井兄弟がぼくのもとに駆け寄ってきた。
「監督!」
ぼくはハッとして周囲の状況を伺った。
試合も終盤。2-2の同点でアディショナルタイムは3分。イエローを取られたものの、チームは誰一人欠けていない……。
ここで追加点をとって、このまま優勝だ。全力で決めてこいと、2人を鼓舞するように、僕は最後の指示を出した。
「へへっ♪ 任せてよ、監督!」
「だって俺たち、チーム315プルタクションのWエース。『最強の双子』だからね♪」
そう言って2人はピッチに戻っていった。
ぼくができること、それはもうチームのみんなを信じて待つことだけだ……。
試合再開の笛が鳴る。
ベンチからでも、みんなの優勝への思いがひしひしと伝わってきた。
昨年、悠介の左足の怪我をきっかけにチームがバラバラになってしまった315プルタクションは、シーズン終盤で優勝を取り逃した。
昨年の失敗をバネに、仲間同士の絆を深め、コンディションを整え、今シーズンこそは優勝を逃さない!とチーム一丸となって頑張ってきた。
その時、涼の堅実なディフェンスにより敵チームの選手の足元が狂う。
すかさず享介がカットに入り、華麗にボールを奪うと蒼井兄弟がゴールめがけて走り出した。
2人をフォローするため、チームメイトたちも攻撃の陣形に移る。
インターセプトからのゴール!! 行ける……!
ぼくは、ふとある日の練習風景を思い出す……。
「去年はオレたち、最後の最後でバラバラになって、結局最後は惨敗だった。すごい、悔しかった……」
「優勝確実……なんて言われてたのに……。サポー ターの期待を裏切ったんだ……」
「だからさ、最後の最後でシュート決めるときは、俺たちの必殺技で決めたいんだ、監督」 「今年こそ、オレたち315プルタクションが『最強』のチームだってことを証明したい!」
ぼくは、あの時、チャンスがあるならいつでも行ってこいと、そう2人に告げた。
最強の技で優勝を決めろ!
ぼくは心の中で祈るように叫んだ。
「決めるよ、享介!」
「任せて、悠介!」
2人が敵チームのキーパーと対峙する。
悠介か、享介か。どちらがシュートを放つのか、キーパーは細心の注意を払いながら2人を観察していた。
その時、阿吽の呼吸とともに享介がふわりとボールを蹴り上げる。
「決めるぜ! Wシュート!!」
悠介の左足と享介の右足が同時に1つのボールを蹴り上げた。
2人にしかできない、巧みな技と絶妙なタイミングが織りなすシュートに、キーパーが驚きの表情をあらわにする。
勢いづいた球は鋭く回転しながら、空気を切り裂くようにゴールに吸い込まれていく。
そして、キーパーの左手を横切って、激しくゴールネットを揺らした。
ピィーーーーーーーーーーー
試合終了の笛とともに、歓声と拍手と声援が激しい雨のようにピッチに降り注ぐ。
「監督一!!」
蒼井兄弟を筆頭に、選手たちがぼくのいるベンチに向かって走ってくる。
みんな、満開の笑顔だった。
ベンチに座っていた控えの選手たちも、ピッチで戦っていた戦友たちを迎えに走っていく。
気がつくと、ぼくの目は涙で溢れていた。
終