さいこうの夜 プロローグ
ようやく覚えたボーゲンでなんとか麓のレストハウスまでたどり着き、ぼくは一息ついていた。
「Wow! So whiteだね、プロデューサーちゃん。Snowmanみたい☆」
「だ、大丈夫!? 俺たち、誰かわかる?」
舞田さんと龍らしき人が、雪をけたてながら、鮮やかに滑り降りてくる。
ゴーグルが雪まみれで、何も見えない。
ここは、某県にある厳冬の雪山……。
315プロダクション・齋藤社長の計らいで、アイドル46人と事務員の山村賢君、そしてぼくはスキー旅行にやってきていた。
「……雲行きが怪しいな。自分の経験上、まもなく吹雪がやってくるだろう」
「ふむ、野生のキツネさんも巣に帰っていたようだ。我々もペンションに向かうとしよう」
信玄さんと硲さんの号令で、みんなが集められる。
ペンションに着く頃には、もう日はとっぷり暮れ、雪が降り始めていた。
小林三郎、明日子夫妻の経営する『ショプール』は、ログキャビン風のおしゃれな建物だった。
「うう~……寒かったですね」
「……うん。でも……懐かしい寒さ、かな」
「へへっ、だよな~♪ 地元を思い出すっていうか!」
賢君はブルブル震えているが、雪国生まれの悠介と夏来は、結構平気そうだ。
「いやー、ペンションだけにテンション上がっちゃうな。これは、最高のバケーションになるぜ。……おおっ! 今のウマかったんじゃねーか?」
「……?」
「プロデューサーさん。今のは『ション』で終わる言葉を絡めた、輝先生なりのダジャレだよー」
「おい、想楽! 解説したら台無しだろ!」
2人のやりとりに、みんなからも笑い声が上がる。
ペンションに入ると、小林夫妻の暖かい笑顔に出迎えられた。部屋着替えを済ませ、食堂に集合すると……。
「……うーん、ちょっと疲れた……かな……Zzz……」
「え、都築さん……!? も、もう眠ってる……」
うとうとする都築さんに、麗さんはため息をつく。
「ふふ、山梨の仕事でも居眠りをしていましたね」
麗にブランケットを手渡しながら、東雲さんは柔和な笑みを浮かべた。
「おや、気持ちよさそうに寝てるねェ。夕食まで、アタシたちもゆっくり休むとしましょ♪」
「そうだね! ……へへ、しょーまさんといると、一緒に雪遊びしたことを思い出すなぁ」
翔真さんと享介は、思い出話に花を咲かせる。
やがて、ショプール自慢の料理が運ばれてきた。多国籍というか無国籍というか……。とにかく多彩なメニューの数々に、ぼくたちは舌鼓を打つ。
そこへ……。小林夫婦が慌てた様子でやってきた。
1人だけ、飛び込みのお客さんが入ってしまった。これから吹雪の予報が出ているため、追い返す訳にもいかない。
今日は貸切のはずだったが、泊めてもいいか? という相談だった。
「もちろん、構わないとも!」
食堂中に、社長の熱意に満ちた声が響く。
「我々とともに、パツション溢れる一夜を過ごそうじゃないか!! なあ、諸君!?」
「もぐもぐ……はい! 全然気にしないっすよ。人数が多ければ多いほど、枕投げは盛り上がるし!」
ドーナツを頬張りながら、春名が賛同する。
「この雪の中、体も冷え切っているはずだ。早く暖まった方がいい」
同じくドーナツを食べながら、タケルが真剣な面持ちでうなずいた。
特に反対する理由もないため、ぼくたちは、迷える来訪者を迎え入れることにする……。
食事を済ませると、談話室に移動した。
すると、ひどく奇妙な客がいることに、気がつく。
談話室の隅、壁に溶け込むようにして座っている、着ぐるみの人物……。
「チャオ☆」
「いやいや、なんで普通に挨拶してるんだ?」
「初対面だから、お近づきの印にと思ったんですよ」
「……ひょっとして、あれが後から来た人ですか?」
北斗と英雄さんの後ろで、隼人は様子を伺っている。
……カエルみたいだな。
それが、その人物に対する、ぼくの第一印象だった。
しかし、こんな所にカエルが来るものだろうか……。
まあいい……。みんなで楽しいスキー旅行にきた今、そんなことはどうでもいい。
「翡翠色の使者も、闇の円卓にて語りあおうぞ!」
「よくわかんねぇけど楽しそうな人だな!」
アスランさんや朱雀さんと一緒に、サタンやにゃこも喜んでいる。きっと害はない。
「やふー! すごいね! カエールそっくり!」
ピエールは、目をキラキラさせる。
「へえ、着ぐるみが趣味なのかな? 珍しいね」
「珍しいというか……変わった人だな」
みのりさんに、鷹城さんは冷静にツッコむ。
最初こそ、驚いたものの……。
雑談で盛り上がるうちに、ぼくたちは、そのカエルの存在が気にならなくなっていた。
すると、その時……。妙な物音がした。
みんなが、一斉にそちらを見る。
グー……。
グーー……。
グーーー……。
「あ……えへへ、すみません。お腹鳴っちゃって」
「食い足りねーんだよ。食いモンよこしやがれ!」
「僕も僕も! デザートがほしいなー♪」
柏木さんに漣君、翔太のお腹の音だったようだ。
「厨房の使用許可はもらった。自分が夜食を作ろう」
「俺も、みんなで食べるケーキを持ってきたんです。切り分けてきますね!」
円城寺さんのあとに、巻緒が続いた。
「のちほど、私も濃茶を点てましょう」
九郎も笑顔で言ってくれる。
そういえば、小林夫妻の姿が見えないが……。どうやら急用で外出してしまったらしい。こんな猛吹雪の中、大丈夫だろうか……。
談笑しながら、夜食をつまんで。
ぼくたちは、和やかな時間を過ごしていた。
その時……。
「ぎゃ、ぎゃおおおん!!!」
空気を切り裂いて、涼の叫び声が響く。
「わああん! なにこれ! かのん、怖いよ~!」
怯えるみんなの元へ、とっさに駆けつける。
何が起きたのか問いかけると……。
「プロデューサー! あのね、テーブルの上に、こんな……こんなモノがあったの……!」
咲が震えながら、ぼくに小さな紙切れを差し出した。
ところどころ赤い何かで汚れている、その文字を辿って行くと……。
『こんや、12じ だれかが きえる』
ごくりと誰かの唾を飲む音が聞こえた。
「……ふん、くだらないな。食事も済んだし、僕は部屋に戻らせてもらう」
「きゅぴぴーん! 薫クン、そういうのを死亡ふらぐというぞなもし!」
「……何?」
キリオに、桜庭さんは怪訝そうな顔をする。
「わはは! まるでホラーゲームの導入みたいじゃ! そうは思わんか、先生?」
「……ああ。おれも、こういう予告文はミステリー小説で読んだことがある」
大吾の問いかけに、九十九さんは落ち着いて答える。
「にわかには信じがたい……日常には起こりえない出来事だな。まさに、奇怪千万と言ったところか」
玄武さんは、眼鏡をクイッとあげた。
「そんな、誰かが消えるなんて幽霊じゃあるまいし。……って、四季くん何をやってるんですか?」
旬の声に振り返ると……。
「無理っす! マジヤバっす! 幽霊とかコワすぎっすよ~!」
「大丈夫だ……な、何かの悪戯だろう? そうだよな? あ、あははは……」
四季と神谷さんが、柱の陰に隠れていた。
「あの、大丈夫でしょうか? 2人とも、食事中のタイワンガザミのように小刻みに震えていますよ」
こんな緊迫した雰囲気の中でも、古論さんはいつも通りでいる。タイワンガザミ……。
「いやいや、そんな悠長にたとえてる場合じゃないでしょ。おじさんもちょっとビビってるよ?」
山下さんは、自分の体を抱きしめる。
「あめひこ、オレたちどうなっちゃうんだよー!!」
葛之葉さんの後ろでは、志狼が騒いでいた。
「おかしなこともあるもんだな。このペンションの空気は清浄そのものだぜ? まあ、何か起きるまで待ってみてもいいが……」
しばしの沈黙が、みんなを包み込んだ。
その時……。
「……おい、待てよ。山村さんがいないぞ」
静まり返った部屋に、冬馬の一言が満ちる。
ぼくたちは、ハツと辺りを見回した。
そんな、さっきまで一緒にいたはずなのに……。
どうして……?
「これは一大事だ!! 賢はどこに行ったんだ!?」
珍しく慌てた様子で、社長が声を張り上げる。
みんなもざわつき始めた。談話室に置かれたテレビでは、アナウンサーが緊急ニュースを伝えている。
それは、この雪山の麓で起きた、凄惨な事件のことで……。
「逃亡者は1名。カエルの格好をしている、だと!?」
冬馬が、衝撃の事実を告げる。全員の視線が、部屋の隅にいる来訪者に注がれた。けれど……。
「とにかく、みんなで手分けして探さねば!」
社長の声にふと我に返る。そうだ、気になる事は多いけれど、じっとしていても意味がない。
まずは賢君の行方を知らないか、みんなに聞き込みをしてみよう。
「Wow! So whiteだね、プロデューサーちゃん。Snowmanみたい☆」
「だ、大丈夫!? 俺たち、誰かわかる?」
舞田さんと龍らしき人が、雪をけたてながら、鮮やかに滑り降りてくる。
ゴーグルが雪まみれで、何も見えない。
ここは、某県にある厳冬の雪山……。
315プロダクション・齋藤社長の計らいで、アイドル46人と事務員の山村賢君、そしてぼくはスキー旅行にやってきていた。
「……雲行きが怪しいな。自分の経験上、まもなく吹雪がやってくるだろう」
「ふむ、野生のキツネさんも巣に帰っていたようだ。我々もペンションに向かうとしよう」
信玄さんと硲さんの号令で、みんなが集められる。
ペンションに着く頃には、もう日はとっぷり暮れ、雪が降り始めていた。
小林三郎、明日子夫妻の経営する『ショプール』は、ログキャビン風のおしゃれな建物だった。
「うう~……寒かったですね」
「……うん。でも……懐かしい寒さ、かな」
「へへっ、だよな~♪ 地元を思い出すっていうか!」
賢君はブルブル震えているが、雪国生まれの悠介と夏来は、結構平気そうだ。
「いやー、ペンションだけにテンション上がっちゃうな。これは、最高のバケーションになるぜ。……おおっ! 今のウマかったんじゃねーか?」
「……?」
「プロデューサーさん。今のは『ション』で終わる言葉を絡めた、輝先生なりのダジャレだよー」
「おい、想楽! 解説したら台無しだろ!」
2人のやりとりに、みんなからも笑い声が上がる。
ペンションに入ると、小林夫妻の暖かい笑顔に出迎えられた。部屋着替えを済ませ、食堂に集合すると……。
「……うーん、ちょっと疲れた……かな……Zzz……」
「え、都築さん……!? も、もう眠ってる……」
うとうとする都築さんに、麗さんはため息をつく。
「ふふ、山梨の仕事でも居眠りをしていましたね」
麗にブランケットを手渡しながら、東雲さんは柔和な笑みを浮かべた。
「おや、気持ちよさそうに寝てるねェ。夕食まで、アタシたちもゆっくり休むとしましょ♪」
「そうだね! ……へへ、しょーまさんといると、一緒に雪遊びしたことを思い出すなぁ」
翔真さんと享介は、思い出話に花を咲かせる。
やがて、ショプール自慢の料理が運ばれてきた。多国籍というか無国籍というか……。とにかく多彩なメニューの数々に、ぼくたちは舌鼓を打つ。
そこへ……。小林夫婦が慌てた様子でやってきた。
1人だけ、飛び込みのお客さんが入ってしまった。これから吹雪の予報が出ているため、追い返す訳にもいかない。
今日は貸切のはずだったが、泊めてもいいか? という相談だった。
「もちろん、構わないとも!」
食堂中に、社長の熱意に満ちた声が響く。
「我々とともに、パツション溢れる一夜を過ごそうじゃないか!! なあ、諸君!?」
「もぐもぐ……はい! 全然気にしないっすよ。人数が多ければ多いほど、枕投げは盛り上がるし!」
ドーナツを頬張りながら、春名が賛同する。
「この雪の中、体も冷え切っているはずだ。早く暖まった方がいい」
同じくドーナツを食べながら、タケルが真剣な面持ちでうなずいた。
特に反対する理由もないため、ぼくたちは、迷える来訪者を迎え入れることにする……。
食事を済ませると、談話室に移動した。
すると、ひどく奇妙な客がいることに、気がつく。
談話室の隅、壁に溶け込むようにして座っている、着ぐるみの人物……。
「チャオ☆」
「いやいや、なんで普通に挨拶してるんだ?」
「初対面だから、お近づきの印にと思ったんですよ」
「……ひょっとして、あれが後から来た人ですか?」
北斗と英雄さんの後ろで、隼人は様子を伺っている。
……カエルみたいだな。
それが、その人物に対する、ぼくの第一印象だった。
しかし、こんな所にカエルが来るものだろうか……。
まあいい……。みんなで楽しいスキー旅行にきた今、そんなことはどうでもいい。
「翡翠色の使者も、闇の円卓にて語りあおうぞ!」
「よくわかんねぇけど楽しそうな人だな!」
アスランさんや朱雀さんと一緒に、サタンやにゃこも喜んでいる。きっと害はない。
「やふー! すごいね! カエールそっくり!」
ピエールは、目をキラキラさせる。
「へえ、着ぐるみが趣味なのかな? 珍しいね」
「珍しいというか……変わった人だな」
みのりさんに、鷹城さんは冷静にツッコむ。
最初こそ、驚いたものの……。
雑談で盛り上がるうちに、ぼくたちは、そのカエルの存在が気にならなくなっていた。
すると、その時……。妙な物音がした。
みんなが、一斉にそちらを見る。
グー……。
グーー……。
グーーー……。
「あ……えへへ、すみません。お腹鳴っちゃって」
「食い足りねーんだよ。食いモンよこしやがれ!」
「僕も僕も! デザートがほしいなー♪」
柏木さんに漣君、翔太のお腹の音だったようだ。
「厨房の使用許可はもらった。自分が夜食を作ろう」
「俺も、みんなで食べるケーキを持ってきたんです。切り分けてきますね!」
円城寺さんのあとに、巻緒が続いた。
「のちほど、私も濃茶を点てましょう」
九郎も笑顔で言ってくれる。
そういえば、小林夫妻の姿が見えないが……。どうやら急用で外出してしまったらしい。こんな猛吹雪の中、大丈夫だろうか……。
談笑しながら、夜食をつまんで。
ぼくたちは、和やかな時間を過ごしていた。
その時……。
「ぎゃ、ぎゃおおおん!!!」
空気を切り裂いて、涼の叫び声が響く。
「わああん! なにこれ! かのん、怖いよ~!」
怯えるみんなの元へ、とっさに駆けつける。
何が起きたのか問いかけると……。
「プロデューサー! あのね、テーブルの上に、こんな……こんなモノがあったの……!」
咲が震えながら、ぼくに小さな紙切れを差し出した。
ところどころ赤い何かで汚れている、その文字を辿って行くと……。
『こんや、12じ だれかが きえる』
ごくりと誰かの唾を飲む音が聞こえた。
「……ふん、くだらないな。食事も済んだし、僕は部屋に戻らせてもらう」
「きゅぴぴーん! 薫クン、そういうのを死亡ふらぐというぞなもし!」
「……何?」
キリオに、桜庭さんは怪訝そうな顔をする。
「わはは! まるでホラーゲームの導入みたいじゃ! そうは思わんか、先生?」
「……ああ。おれも、こういう予告文はミステリー小説で読んだことがある」
大吾の問いかけに、九十九さんは落ち着いて答える。
「にわかには信じがたい……日常には起こりえない出来事だな。まさに、奇怪千万と言ったところか」
玄武さんは、眼鏡をクイッとあげた。
「そんな、誰かが消えるなんて幽霊じゃあるまいし。……って、四季くん何をやってるんですか?」
旬の声に振り返ると……。
「無理っす! マジヤバっす! 幽霊とかコワすぎっすよ~!」
「大丈夫だ……な、何かの悪戯だろう? そうだよな? あ、あははは……」
四季と神谷さんが、柱の陰に隠れていた。
「あの、大丈夫でしょうか? 2人とも、食事中のタイワンガザミのように小刻みに震えていますよ」
こんな緊迫した雰囲気の中でも、古論さんはいつも通りでいる。タイワンガザミ……。
「いやいや、そんな悠長にたとえてる場合じゃないでしょ。おじさんもちょっとビビってるよ?」
山下さんは、自分の体を抱きしめる。
「あめひこ、オレたちどうなっちゃうんだよー!!」
葛之葉さんの後ろでは、志狼が騒いでいた。
「おかしなこともあるもんだな。このペンションの空気は清浄そのものだぜ? まあ、何か起きるまで待ってみてもいいが……」
しばしの沈黙が、みんなを包み込んだ。
その時……。
「……おい、待てよ。山村さんがいないぞ」
静まり返った部屋に、冬馬の一言が満ちる。
ぼくたちは、ハツと辺りを見回した。
そんな、さっきまで一緒にいたはずなのに……。
どうして……?
「これは一大事だ!! 賢はどこに行ったんだ!?」
珍しく慌てた様子で、社長が声を張り上げる。
みんなもざわつき始めた。談話室に置かれたテレビでは、アナウンサーが緊急ニュースを伝えている。
それは、この雪山の麓で起きた、凄惨な事件のことで……。
「逃亡者は1名。カエルの格好をしている、だと!?」
冬馬が、衝撃の事実を告げる。全員の視線が、部屋の隅にいる来訪者に注がれた。けれど……。
「とにかく、みんなで手分けして探さねば!」
社長の声にふと我に返る。そうだ、気になる事は多いけれど、じっとしていても意味がない。
まずは賢君の行方を知らないか、みんなに聞き込みをしてみよう。
・Jupiter
・DRAMATIC STARS
・Altessimo
・Beit
・W
・FRAME
・彩
・High×Joker
・神速一魂
・Café Parade
・もふもふえん
・S.E.M
・THE 虎牙道 その1
・THE 虎牙道 その2
・F-LAGS
・Legenders
※「THE 虎牙道」のみ文章差分が確認できている。条件は不明。
・DRAMATIC STARS
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